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2025.11.17NEW
パーキンソン病NEWS【vol.6】便秘とパーキンソン病
パーキンソン病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺および関連疾患の、知っておくと役に立つニュース
つい最近、美川憲一さんがパーキンソン病であることを公表され、大きな反響を呼びました。これまでも、モハメド・アリ氏や Michael J. Fox 氏など、世界的に著名な方々がパーキンソン病を患ってきましたが、こうした報道を通じて、パーキンソン病がより身近で一般的な疾患として社会に認識されるようになってきたと感じます。
さて、便秘はパーキンソン病の多くの方にみられる代表的な症状です。一般の方に起こる便秘よりも頑固で、複数の下剤を使ってようやく排便できる方も少なくありません。一般的には食物繊維や牛乳がよいと言われますが、パーキンソン病の便秘ではこうした食品では効果が乏しいことがしばしばです。患者様から「効いた」と言われる食品として、炭酸水、玄米餅、キウイ、オリーブ茶などがありますので、お困りの方は試してみる価値があるかもしれません。
下剤として古くから広く使われているのはセンノシドや酸化マグネシウムです。しかし、センノシドは大腸の粘膜が黒くなる「大腸メラノーシス」を起こし、大腸の動きが悪くなる可能性があります。酸化マグネシウムは、腎機能が低下している方では高マグネシウム血症を生じ、だるさ・吐き気・眠気などを引き起こすことがあるため注意が必要です。私がよく処方するのはマクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000)で、下痢になりにくく体に吸収されないため安全性が高い薬です。多くの方はこの1剤で十分調整可能ですが、塩味が気になり中止される方が少数いらっしゃいます。
最近、初期のパーキンソン病患者様を対象にした研究で、便秘が「体の中の炎症」と関係していることが分かってきました。イギリスの研究グループは特殊なPET検査を用いて脳の炎症を評価したところ、便秘が強い方ほど大脳皮質や脳深部の広い範囲で炎症が強いことが確認されました。また、髄液ではリンパ球、血液では免疫細胞が増えており、便秘の程度と全身の炎症反応が深く関係していることも示されています(Camacho ら、2025)。
これらの結果から、便秘は単なる生活習慣の問題ではなく、パーキンソン病の進行とも関わる「重要なサイン」である可能性があります。初期の段階から便秘をしっかり整えることは、症状の進行をゆるやかにし、生活の質を保つためにも非常に大切です。便秘でお困りの際は、主治医の先生に早めにご相談ください。


