救急指定病院/基幹型臨床研修病院/DPC対象病院

医療法人社団高邦会 高木病院

新着情報

お知らせ

2025.09.05NEW

パーキンソン病NEWS【vol.5】妊娠とパーキンソン病

パーキンソン病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺および関連疾患の、知っておくと役に立つニュース

妊娠とパーキンソン病:パーキンソン病・運動障害疾患専門家からの意見をご紹介

パーキンソン病は中高年だけでなく、若い世代で発症することもあります。そのため妊娠や出産を考える女性にとって、「薬は赤ちゃんに影響しないか」「授乳はできるのか」といった不安は大きな問題です。
国際パーキンソン病・運動障害学会の専門家グループがまとめた最新レビューでは、妊娠前から出産後までの管理について、これまでに得られた知見が整理されています。
まず妊娠時の薬の使用に関しては、次のような提案がなされています。

  • レボドパ製剤が最も安全性の情報が多く、妊娠中でも第一選択薬であると述べられています。これまで150例以上の報告で、大きな危険性の増加は確認されていません。
  • アマンタジンは動物実験で奇形が報告されており使用を避けるべきとされています。
  • ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬、COMT阻害剤(エンタカポン)などは限られた症例報告しかなく、個別に慎重な判断が必要です。ただ日本でも2020年から使用可能になったCOMT阻害剤であるオピカポンは、妊娠中の使用に関するデータはなく、安全性は不明です。
  • 日本でよく使用されるイストラディフィリンとゾニサミドについては、記載はありませんでした。

授乳に関しては、レボドパが母乳に移行する可能性はありますが、現時点で大きな害は確認されていません。ただし、他の薬は情報が乏しいため、授乳継続の可否は主治医と相談することが推奨されます。

ただ欧米と日本では、妊娠時・授乳時の使用可能・不可能な薬剤が異なるため、注意が必要です。日本のパーキンソン病診療ガイドライン2018の中のQ and A 2-7にその対応が記載されています。またこのガイドライン以降に発売された薬剤もいくつかありますので、その薬剤に対する指針は、現在改定中のガイドラインに示されると思います。

この論文は「まだ十分なエビデンスはないが、工夫すれば妊娠・出産・育児は可能」という前向きなメッセージを伝えています。大切なのは、神経内科医・産科医・家族が協力して、安全に妊娠期を過ごせる環境を整えることです。
妊娠をお考えの方は、ぜひかかりつけの先生にしっかり相談をして、より安全な妊娠、出産計画を立ててください。

参考論文
Lehn AC, et al. The Management of Parkinson's Disease Before, during and after Pregnancy-an MDS Scientific Issues Committee Review. Mov Disord Clin Pract. 2025 Aug 20.